『教育の力』苫野一徳
『教育の力』
2014年3月20日 初版第1刷発行
著者名 苫野 一徳(とまの いっとく)
発行所 株式会社講談社
☆教育にはこれから何ができるのか―――
学校とは―――
ー昔ー 生まれ育った”習俗”を離れ、平等に一定以上の教育を受けられた
ー現在ー 学校自体が閉鎖的な”習俗”になってしまった いじめ等、様々な問題
教育の”力”を最大限発揮できる構想・プラン
・学びの「個別化」「協同化」「プロジェクト化」
・子どもたちが多種多様な人たちと交われる空間作り
これからの「よい」教育のあり方とは―――
より”人間関係の流動性”に開かれた学校へ!
<自由の相互承認>
わたしたちは、自分が<自由>になるためには、他者の<自由>もまた、つまり他者もまた<自由>を求めているのだということを、ひとまず互いに承認し合う必要がある
<自由>の本質とは
<自由の相互承認>を十分に自覚した上で、自らが生きたいように生きられること
<公教育>とは
すべての子どもが<自由>な存在たりうるよう、そのために必要な”力”<教養=力能>を育むことで、各人の<自由>を実質的に保障するもの
と同時に、社会における<自由の相互承認>の原理を、より十全に実質化するためにある
☆「平等か競争・多様化か」の問い
<一般福祉>の原理とは
教育政策は、ある一部の人たちだけの<自由>を促進し、そのことで他の人たちの<自由>を侵害するものであってはならず、すべての人の<自由>を促進している時にのみ「正当」といえる
早い段階から「できる子」と「できない子」を振り分け、「できる子」により多くの教育投資をすることで、この国を引っ張っていって貰おうという思想
⇓
<一般福祉>の考えが見られない
「絶対平等」を掲げる政策
「結果の平等」を重視するあまり、すぐれた学力を持った子どもたちの、より以上の学びの保障を過度に拒む
⇓
<一般福祉>の考えが見られない
「平等か競争・多様化か」の対立の解消に向けて
<一般福祉>の原理を底に敷けば、わたしたちは、<一般福祉>を達成するために、教育にはどのような「平等」が必要か、そして、どのような「競争」や「多様化」を容認あるいは促進すべきといえるのか、と問い合うことができるようになる
できるだけすべての子どもたちの「学ぶ力」を育んでいくために
☆①「学びの個別化」
木下竹次「新教育」の実践
いわゆる「大正自由教育」と呼ばれる教育運動
子どもたちが自発的に学び、また努力それ自体に意義を見出しながら学んでいける環境をつくることができれば、子どもたちはその学びをより充実させようと、むしろ自分を律することを学んでいく
―――「落ちこぼれ」を減らす
☆②「学びの協同化」
「競争」より「協力」「協同」の方が、高い生産性を生むという調査結果が多く報告されている
今日教師に求められている力量は、一人ひとりの学びを支え導くとともに、「学びの協同化」を促進する力
―――全体の学力を向上させる
☆③「学びのプロジェクト化」
ペーター・ペーターセン「イエナプラン教育」オランダにて普及
マルチエイジの学級編成で、互いに教え合ったり学び合ったりする
「学びの個別化」「協同化」に、学力格差を縮小する傾向があると言われている
♡この本を読んで♡
流動性の高い現代社会において求められることは、絶えず学び続ける姿勢です。
公教育の本質は、子どもたちが<自由の相互承認>の感度を育むことを土台に、<自由>になるための<教養=力能>を育むことにあります。
教師には、子どもたち一人ひとりの学びを達成させられるよう“支援”する力が求められます。そういった教師の育成を国レベルで本気で取り組むかどうかで、今後の日本は大きく変わると感じました。
どうか日本の大人たちが無益な論争をやめ、子どもたちが<自由>に生きられる力を育むことを念頭に置いた議論や改革を行って欲しいと強く願います。
すべての教師に求められることもまた、「完璧」な教師ではなく、多様な教師の「協同」であるのですから。