自分も世の中を動かす一人なんだ

『保育園義務教育化』

2015年7月6日 初版第1刷発行

 

著者名 古市 憲寿

発行所 株式会社小学館

 

 

古市憲寿さんの『保育園義務教育化』という本を読みました。

 

古市さんと言えば、TVで拝見する限り

・「社会学者」という肩書らしい

・主食はチョコレート

・前髪が長くて目に悪そう

くらいのイメージしかなかったのですが、

あと顔がめっちゃ私のタイプ

今回、彼に対する新たなイメージが加わりました。

それは、日本に住む一若者として、真剣にこの国の将来を考えている人。

というもの。

 

歯に衣着せぬコメントで、時にはお茶の間をヒヤッとさせる彼ですが、

こちらの本でも大胆な提言をしています。

この本のタイトルでもある『保育園義務教育化』というアイデア

文字通り、保育園(・幼稚園)を「義務教育」にしてしまえばどうか?

というものです。

 

保育園が「義務教育」となると、

国が本気で保育園を整備するため、待機児童問題がなくなるだろうとのこと。

更に、「お母さん」が子どもを保育園に堂々と預けられるようになることを、

利点として挙げています。

 

この本では、教育経済学に基づき、乳幼児期の教育の重要性も説いています。

良質な保育園へ通い、意欲や自制心といった「非認知能力」を育むことで、

その後の人生で「成功」する確率が高くなることが分かっているそうです。

学歴と収入が高くなる一方で、失業率や犯罪率が低くなる。

ということは、失業保険や生活保護受給者が減って、社会全体もトクをする。

格差が広がる日本だからこそ、「社会全体のレベル」を上げるための、

就学前教育の重要性を訴えています。

 

その他色々とタメになることは書いてあったのですが、

私がいちばん感銘を受けたのは、古市さんの「お母さん」に対する気遣いです。

彼が言うには、普通の女性は、子どもを産み「お母さん」となった途端に、

世間からは人間扱いされなくなり、一般の「人間」以上の規律を課されてしまう、

と言うのです。

そんな大袈裟な、と思うかもしれません。

しかし本を読み進めていく内に、自分もその厳しい世間の目の1人だと気付かされ、

ドキッとしてしまいました。

 

たとえば、今回古市さんが取材をされた、産婦人科医の宋美玄さんによると、

日本では産後ケアの重要性があまりにも認知されていないそうです。

確かに日本社会では、妊婦さんはすごく大事にされるけど、

子どもを産んだ「お母さん」の身体に対しては、

あまり気に掛けられていないように思います。

むしろ、子どもを少し誰かに預けてリフレッシュしようものなら、

批判の対象になりかねない風潮ではないでしょうか。

 

私はこの本を読むまで、コンビニにオムツが売っているのか、

2014年の時点で国土交通省

「ベビーカーは折りたたまずに乗車することができます」

と宣言していることすら知りませんでした。

また、労働力不足を補うための「移民法」に関するニュースと、働きたいのに働けない「お母さん」の問題を結びつけて考えたこともありませんでした。

あまりにも知らないことが多く、今まで世の中の「お母さん」に対するなんだか大変そうなニュースを耳にしても、どこか他人事のように考えていたことに気が付かされました。

 

もし保育園が義務教育化されたら、

「国が義務って言うから仕方なく―――」と言って、

堂々と子どもを保育園に預けることができるようになります。

この本で言う「義務教育」とは、たとえば子どもを週に1度1時間だけ預けてもいい、と柔軟に捉えているそうです。

定期的に自分の時間を持ちたいと思っている専業主婦の方や、

誰もが利用しやすい制度が理想とのこと。

 

古市さんの、お母さんが後ろめたい思いをせずに、子どもを保育園へ通わせることができる日本にしたいという、優しい願いを感じました。

そして、そもそも子どもを預けることに対して「後ろめたい」気持ちにならないような社会に、みんなで変えていかなければいけないと、考えさせられる一冊でした。